治療家のつぶやき29:花粉症その2

目次

「治療科のつぶやき27」で花粉症が楽になったことの考察
スギ花粉症を訴える患者さんの昨年(2018年)のカルテを見ると、治療後の結果、
なんとなく楽になったと、答えた人も何人かいましたが、ほとんどの患者さんは変化なく
つらいと、答えていました。
ところが今年は楽ですと、答える患者さんがほとんどで、その理由を考えています。

私の治療は、中国医学の古典である「難経」の中の「69難、75難、77難そして81難」に
「黄帝内経霊枢」に有る「経別11と経筋13」を併用する方法です。
簡単に説明すると、患者さんの脈と腹部の診断から証(あかし:患者さんの状態と同時に
治療法)が決まると、上で述べた「難経」の一つが決定します。これに「霊枢」とを組み
合わせて刺鍼する方法です。

昨年は、従来の治療法を変えたケースが2例ありました。
一つは、「77難」を読み返している時、全く逆に理解していることに気付きました。
この77難型は、「未病を治す」と、されている治療方です。
結果、思いがけない効果が有りました。
身体は加齢と共に、経絡の流れが滞り勝ちになります。関節部に特に顕著に表れて来ます。
その結果放置していると、石灰化が始まり、身体の動きが緩慢になってきます。最近話題になっている
ロコモティブ症候群です。
この状態が、徐々に改善するようになりました。驚きでした。
しかし、花粉症の改善との関係は、今のところ不明です。

二つ目は、刺鍼の順序を変えました。今までは鍼を刺す順番は経験的に行って来ました。
昨年2018年11月の臨床中、今まで通り同じ方法で刺鍼を行っているにもかかわらず、
何故か腹部の緊張が中々取れません。
思いあぐねた結果、改めて最初から鍼を行うことにし、刺鍼の度に腹部の反応を
観察しました。
鍼の効果は腹部の反応により決定しているからです。
その結果、治療は満足できるものでした。
しかし、この作業は今までの刺鍼の順序をかなり変えることになり、20数年の間、治療を行って
来た自分にとって少し複雑な気持ちにさせました。
ともあれ、刺鍼の順番がこれ程影響するとは思いませんでした。
以上、昨年の11月から今日に至るまでに、治療法を変えたのは上に記載した2例で、
もし鍼が花粉症に影響を及ぼしたと仮定するなら、多分刺鍼の順番を変えた効果であると思います。

症例:
1) 患者:70歳前半の中肉中背の女性。
主訴:
慢性的肩こりと腰痛。3月に入って花粉症による鼻詰まりでよく眠れない。
職業は病院でのまかない。立ち仕事と野菜の刻みで肩こり。
証:腎虚脾実の81難型。
(注)腎虚とは肺と腎が虚する症状で、肺経に刺鍼する方法です。
治療後、鼻詰まりは解消。

2)患者:「治療科のつぶやき27」で述べた眼のかゆみと喉のイガイガとかゆみを
訴えた40台の女性。
主訴:
黄砂による少し目のかゆみ。
先月の治療後、ほとんど目のかゆみはなかった。

ちなみに、スギ花粉の舞い散る登山で、昨年は自分の持参した箱入りのチッッシュが足らず
友人の物を使い果たしたほど苦しんだにも拘わらず、今年はほとんど必要がなかったと、言い、
友人は鼻水に耐えながら、それを見て不思議がっていたとの事でした。
治療:肝虚脾実の69難型。
結果:目のかゆみはかいしょうした。

刺鍼の順番を変えた結果、花粉症が改善したと仮定して、その理由を考察してみました。
五行色体表とは、 五行の性質に臓腑の関連する性質や生理、病理、病状を当てはめ、医学に応用したものです。
この色体表は身体の中を知るためには重要な手掛かりになる項目です。

五行色体表(抜粋)

五臓:肝・心・脾・肺・腎
五根:目・舌・口唇・鼻・耳
五液:涙・汗・涎・涕(鼻水)・唾

例えば目がかゆい時や涙が出る時:肝が司ります。
鼻が詰まったり、鼻水が出たりあるいはかゆい時は、肺が司ります。
考察:
上述した事のみで、鍼治療で花粉症が解消できると結論を下すのは、まだ早急です。
しかし、鍼の順序を変えたことにより、何らかの影響が身体に及ぼしたことは事実と思います。
次は檜の花粉症について臨床を続けて行きたいと思います。
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