治療家のつぶやき17:刺鍼について


目次


刺鍼について
6年前に「75難」の治療方法に辿り着くまで、私の治療は「69難」の経絡治療だけでした。
15年以上続けていた当時、この治療法に対して何の疑いもなく治療を行っていました。そして
全く支障も有りませんでした。少なくともそのように思っていました。
ところが、毎月1回くらいの間隔で健康管理を行っていた患者さんの治療中のことでした。
肝虚証と診断を下し、陰谷穴に補法の鍼を行いました。その瞬間でしたが、患者さんの脹脛が
収縮したのです。今までとは違う反応を起こしたのです。いえ、今までも何度かこのような
反応を起こしたケースが有ったことを覚えていました。理由が分からなかったから見過ごして来たのです。
それまでは、患者さんは楽になったと言い、私自身も治療結果について特に何の支障有りませんでしたので特別気にしませんでした。しかし今振り返ってみると、治療結果を十分に考察しなかったのだと思います。
では何故この時患者さんの脹脛の収縮が気になったのかを思い出してみると、腹部の緊張が
中々取れなくて、何度も腎経と肝経に鍼を行ったことを思い出しました。

この時の患者さんの反応については余り覚えていませんが、以後も続けて通ってくれていますので
それなりの効果はあったのだと思いますが、治療家としては今思えば冷や汗ものです。
以前、「治療家のつぶやき15」で述べたようにそれなりに患者さんの症状が解消出来るので
証の決定については今は十分に診察しています。

刺鍼の効果について、講習会で質問した時に以下のように教えられました。
「腹部の緊張が解消出来れば、腰部の緊張も改善します。腰部の緊張解消は頸部の解消につながり
ます。」
従って、何度も腎経と肝経に鍼をしたと言うことはつまり鍼の効果がなかったことを意味します。

「難経69難」は治療原則を以下のように述べています。
「虚する者はその母を補い、実する者はその子を瀉す」
この治療法は陰経の虚を補えば、陰経の実は解消出来ます。つまり「69難型」の治療では決して
陰経を瀉すことはありません。陰経を瀉すことは厳禁なのです。

では何故腹部の緊張がとれなかったのでしょうか。
今だから理由が言えますが、それは証が間違っていたのです。

続く

治療家のつぶやき16に戻る
治療家のつぶやき18に続く
このページのトップへ戻る 治療家のつぶやきの項目に戻る indexにもどる