臨床に基づく経絡治療の実践
鍼灸治療には数多くの治療方が有ります。一つの方法が総ての患者さんに適応出来るとは思いません。従って患者さんにとって最も適する治療が出来れば最善です。ところがどのような治療が患者さんにとって適当であるか否かを判断することは治療家にとって大変困難な作業です。
ここでは六部定位の脈診方を中心に、腹診と切経を考慮した方法を述べてみます。
肺虚の証で「69難型」の治療法は以下のような組み合わせが成立します。
勝浦甚内著「難行の臨床研究」による脾土の病が肺金に伝変した場合の取穴を列記します。
(1) 肺経の兪土穴に補法。
(2) 肺経 脾経の兪土穴に補法。
(3) 肺経の兪土穴、脾経の経金穴に補法。
(4) 肺経 脾経の経金穴に補法。
(5) 肺経の経金穴、脾経の兪土穴に補法。
(6) 肺経の経金穴、兪土穴に補法。
(7) 肺経の経金穴、兪土穴、脾経の兪土穴に補法。
以上、経穴の組み合わせだけで七つの方法が考えられます。更にこれに原穴 絡穴 げき穴を
加えれば治療法はかなりの数になります。
しかし、ここに列挙された治療方は、全て脾土の病が肺金に伝変した「肺虚証」を改善させる69難型の治療方です。
つまり、左右の肺経と脾経を補う刺鍼方で、原則的に考えれば治療方は以下のような組み合わせが成立します。
「69難型」の刺鍼方
1. 左右どちらか一方だけに刺鍼する治療方は、二通り有ります。
2.左右両方に刺鍼する治療は以下のような組み合わせが成立します。
左右のどちらを先に刺鍼するかで二通り有ります。
分かり易くするために、左側からの刺鍼について記載します。
(1)左の陰経を補った後、つまり肺経と脾経を補った後、続けて右の肺経と脾経を補う方法。
この時、陽経を瀉方する方法は二通り有ります。
@左右の陰経を補った後、左の陽経から瀉し、後右の陽経を瀉方する。
A左右の陰経を補った後、右の陽経から瀉し、後に左の陽経を瀉方する。
(2)陰経を補った後、同側の陽経を瀉す方法。
@左の陰経を補った後、左の陽経を瀉す。続けて右の陰経を補った後、右の陽経を瀉方する。
以上左の陰経から治療を始める方法は三通り有ります。右から治療を行う方法を加えて治療方は6通り有り、1の片方治療方法を加えれば「69難型」の治療方は8通り有ります。
一つ老婆心ながら言わせてもらいます。
この文章を読んで、随分順番にこだわっていると思われる治療家もいると思います。
そのような人は、どちらから治療を行ってもたいして変化はないと思っているでしょう。実は
私も以前はそのように思っていました。
ところが、「難経75難」型の治療のさいに、「69難」の虚から始める原則に従って刺鍼を
行うと、順序が如何に重要であるかを知りました。そして、「69難」型の治療にも応用した
結果、その効果に改めて驚嘆しました。
つづく
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霊枢経脈第十の解説
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