経絡治療と養生

  1. 養生の意味

養生の意味
15年以上当院に通い続けている患者さんが治療後に突然
「先生、Oさんを覚えていますか?」と、5年前、突然しばらく辞めたいと連絡して来た患者さんのことを話し始めました。
この話を始めた人は、Oさんに紹介されて来院した患者さんでした。
Oさんは10年継続した患者さんで、初診時の主訴は腰痛でした。
何回かの治療後、腰痛は改善したのですが、治療後の快適さが彼女の来院を継続させて
いたのです。
したがって、来院しなくなった理由は、治療後特に変化がなくなったのがその理由だろうと
思っています。
「先日、用事があってOさんの自宅近くに出向きました。」と、彼女は話し続けました。
「Oさんの玄関は、外階段を上ったところに有り、その階段を上るOさんの後ろ姿が目に入ったのです。」
そこまで話した後、しばらく沈黙が続きました。


16、7年ほど前のことですが、当時80歳の患者Aさんがある時声をかけられました。相手はニコニコして懐かしそうに話して来ました。
ところがAさんは相手の顔に全く覚えが有りません。
けげんな顔をしていると、相手はBですと、名前ををあかしました。
あまりの驚きで、Aさんは驚愕に声が詰まったそうです。
「本当にBさん?」と、聞き直さざるを得ないほど容姿が変化していたのです。
「彼は私より5歳若かったはずです。10年前は精悍で溌剌していました。」と、Aさんは話し、
そして、Bさんは、最近は身体の疲労感があり、膝痛や腰痛が進み歩くのがつらいと彼に訴えたそうです。
人には、ある年齢を境にして急に老化に進むことがあります。
そして、年と共に次第にその差が開き、気が付いたら手の届かないほど差が出てきます。
理由の一つは自分は健康だからと言って、健康管理を怠ったためと思います。
「マッサージや鍼など定期的に施術を受けている人は大概老化の速度が遅くなる傾向にあります。」と、
私はAさんに、養生の意味について話したことを思い出しました。
東洋医学は河を経絡に例えています。河川の治水が国土の維持に重要であるように、健康を
維持するたねには経絡の流れを滞らせないように監理することが大切です。
人体も加齢や冷えやストレスなどにより代謝が低下して来ると、代謝産物が滞ります。
これは、錆のようなものです。
 手足の動きが加齢と共に動かしにくく、緩慢になってくるのはこの代謝産物である錆が徐々に
増し、石灰化するためです。それが、運動神経を圧迫して行くのです。
 加齢と老化は少し意味が違います。年を重ねることは全ての生物にとって避けることは出来ませんが、
老化の速度は個人の努力によって異なって来ます。
老化とは腎気が減少して行くことです。つまり腎虚になると言うことです。
従って腎虚を改善することが養生ということになります。

このAさんの話を以前彼女に話したことが有りました。それを思い出したのでしょう。
「Oさんは、ヨタヨタしながらやっと玄関先に辿りつきました。その後ろ姿は生気がなく
一気に老化が進んだように見えました。先生に以前聞いた話は本当だったのですね」と、
彼女は変わり果てたOさんの5年前の姿を思い起こしながら、現在の自分の身体と比べ
治療を継続して来た事の意味を噛みしめていました。
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