五行説
全 世界の物事を現象により分類したのが、五行です。これの代表が「木」「火」「土」「金」「水」です。
陰陽が交わって五行を生じ、万物は五行により構成されています。 従って全てのものはいずれかの性質を持っていると考えました。
これに変化の法則を加味して利用できるようにしたのが五行論です。
五行の最古の記述と思われる古典「尚書（しょうしょ）」の中に、下記のような文があります。
「一に曰く水、水を潤下と曰う」じゅんかとは流れ、潤すこと。
五行色 「二に曰く火、火を炎上と曰う」えんじょうとは燃え上がる炎のこと。
「三に曰く木、木を曲直と曰う」きょくちょくとは物が曲がったり、真っ直ぐになったりすること。
「四に曰く金、金を従革と曰う」じゅうかくとは堅いものを加工して、形を変えること。
「五に曰く土、土をここに稼穡す」かしょくとは穀物が成り、それを収穫すること。
小寺敏子先生の解説によれば、
世界の物質を２つに分けますと、鉱物と生物になります。 鉱物を「金が」に、生物が「木」を代表します。
作用を分けますと、酸化作用と還元作用となります。 酸化を「水」、還元を「火」で表現します。
「土」は甘を作ること、即ち穀物を植え取り入れ収穫し収納することです。 言い換えれば反応する場所です。
生物系の「木」と、金属鉱物系の「金」を対比して、横に配列します。
酸化系の「水」と還元系の「火」を対比して、縦に配列します。
その中央に「土」を配置します。
これは分類するだけでなく、事物の相互関係を明らかにすることにあります。
十字の左右に「金」と「木」を配置し、上下に「火」と「水」を配置し、その中央の交差点に
「土」を配置します。
五行色体表の「五方」は「東・南・中央・西・北」となっています。 また「五季」は「春・
夏・長夏・秋・冬です。その季節の最後の変わり目の１８日間は土用です。その中で最も重要な
ものが夏の終わりの土用で、これが長夏です。
五行色体表と臨床への応用についてはここをクリックして下さい。
上の記述で中央に「土」を配した四角形に対し「火」と「金」の間に「土」を配置し
「木」→「火」→「土」→「金」→「水」→「木」と線で結ぶと、五角形が出来ます。
これが「木火土金水」の五行になります。 この五角形に対角線につまり、「木」→「土」→
「水」→「火」→「金」→「木」と線で結ぶと星印ができます。
五行の法則と変動
（１）相生関係
（２）相克関係
（３）相乗・相侮（そうぶ）関係
（４）反剋・勝復関係
１、相生そうしょう）関係： 促進、助長、養成などの作用をすること
木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じる、と一定方向に助け合う関係で母子関係とも言います、 このように循環し、お互いの隣り合う関係です。
２、相剋関係：抑制と制約の作用をすること
木は土を剋し、土は水を剋し、水は火を剋し、火は金を剋し、金は木を剋すと言うように
、１つ置いて先の相手を抑制し、相手から栄養を奪い、お互いに争う関係を相剋関係と言います。 上野説明で星印になる関係です。
つまり「木」は「土」を剋するが、同時に「金」に剋されると言う関係です。
３、相乗・相侮： これはいずれも病的な状態を表しています。 相乗とは相剋の度が過ぎて正常な制約の度合いを超えることです。 つまり相手の弱味みに乗じて、強い所が弱い所に乗り掛かることです。
それによって、一連の異常な相剋反応が起きることで、これには二つの面があります。
@、相剋の度合いが強すぎて、剋される方が剋されすぎてしまい、結果全体に波及してしまう。
例えば、「木」が盛んになり過ぎ、「金」が「木」に対し正常な支配を加えることが出来ず、その結果
「土」が剋され過ぎること。 そのため「土」は更に弱く成ります。 これを「木乗土」といいます。
A、五行中のある｢行｣が弱くなり、剋すべき「行」が剋されずに、相対的に増強されること。
例えば、「土」自身が弱いために、木剋土の力が相対的に強まり、土が更に弱められることに
なる。 これを「土虚木乗」といいます。
相侮は相剋の逆の現象で、本来剋されるはずが、盛大になり過ぎて逆に相手を剋し侮ることです。
@、「木」は本来「金」に剋されるはずであるが、「木」が強過ぎると、「金」の剋を受けないばかりか、逆に「金」を侮ることになる。 これを「木侮金」といいます。
A、「金」自身が弱く、「木」を剋制することができず、逆に「木」の侮りを受ける。 これを「金虚木侮」といいます。
４．勝復関係またこれを｢反剋｣ともいいます。
母が相剋関係のある相手から抑制されている時、その子が相剋関係から母を抑制している相手を抑え、全体として平行常態を保とうとすることです。
「木」が強くなり「土」を剋すると、「金」が「木」を剋して全体の平衡を保とうとする
関係をいう、三角関係が成立します。
この方法は直接攻撃しないで、第三者に頼み相手を説得する方法で、治療に応用出来ます。
例えば肝が実して、怒りヒステリーを起こしている時は肝を直接攻撃（治療）するのではなくて、
原因の肺を脾が何らかの精神的苦しみで弱り、これが肺を弱らせるため、肝が助長してきた為に
肝が実したので、治療としては肺を補うことで怒りは収まるのです。
これらの作用があって、初めて自然界は生態を維持できるし、人体も生理的な平衡を維持しているのです。
続く