国民病と言われる4代疾患で最も多い伊野が腰痛です。
腰痛はその痛みが発症してから続く期間によって以下のように3種類に分類されます。
1.急性(6週間まで)
2.亜急性(6-12週間)
3.慢性(12週間以上)
に分類されます。
人口の9-12%が腰痛を抱えており、またおおよそ25%の人々が過去1ヶ月以内に
腰痛を経験していると言われています。
又、およそ40%の人々は人生に一度は腰痛を経験するとされ、この割合は先進国においては
80%まで上昇するそうです。
厚生労働省によれば、腰痛全体に占める特異的腰痛(骨折、感染症、がん、変性疾患など原因の
はっきりしている腰痛)の割合は、15%ほどであり、残りの85%ほどは、原因のはっきりしない
非特異的腰痛です。
非特異的な腰痛の痛みを感じる部位は、腰ではなく脳であるとされています。
ある調査によれば、腰痛患者のうち38%には心理学的障害が認められており、心因性腰痛と呼ばれています。
非特異的腰痛を来たしやすい要因としては
精神的要因が大きく、職場への不満、不安、ストレス、抑うつなどがあげられます。
以上はウィキペディア(Wikipedia)からの抜粋です。
しかし東洋医学は何千年間の臨床を経た結果から推察して治療を行なって来たので、
現代医学的検証は患者さんに対しての説明には必要ですが、治療自体には余り必要ではありません。
経絡治療はどの経絡が変動を起こし、腰に痛みを発症させるかを4診法によって診断します。
その診断結果を「証」と言います。
4診法の中で特に私にとって重要とされるのが、問診と切診です。
問診とは病理に関連した病証を問うて診察する方法であり、
切診とは患者に触れて診察する方法で脈診、腹診、切経の3種類あります。
しかしこれらを熟達するのはなかなか困難です。
それに代わる方法として下肢伸展テストがあります。勿論これが全てではありませんが、
腰痛の原因を調べる簡易方法です。
腰痛検査法
@.仰向けに寝て、膝を曲げ、膝が腹部に近づける時痛みが出たり、腹部に近づけることが困難な時は
脾経の変動とみます。
A.仰向けで、膝を曲げ、伸ばした他方の膝の上に踵を載せて、乗った膝をベッドに近づける。
痛みが出たり、近づけるのが困難な時は肝経の変動とみます。
B.うつぶせになり、膝を曲げて踵を臀部に近づける。痛みが出たり、近づけるのが困難な時は
腎経の変動とみます。
(注):必ず片足ずつ行う。
これらのテストは患者自身でも診断できます。
10年くらい前、義兄が腰痛で苦しんでいる時、姉に上のテストから指圧の個所を教えました。
遠方なので電話での指示でした。
その結果、慢性的な腰痛だった義兄の腰痛は解消され、現在に至っています。
しかし、例外は如何なる時にも有ります。
例えば右が1の状態で、左が2の状態のことも有り、
片方の足で1と2あるいはAとBのことも有ります。
これらの場合はどうすればよいのでしょうか。
つまりどちらの証で治療を行なえば良いか迷います。
患者:70台の女性。中肉中背。介護士。
介護の仕事は大変な負担で、腰痛を起こしている人がほとんどだと言っても過言ではありません。
彼女も例外なく、10年以上前に右の腰痛を起こしました。この間整形外科、接骨院、
鍼灸(経絡治療、低周波治療、刺激鍼など)を行なって来ましたが、一向に改善しませんでした。
むしろ、よりひどくなり、左の首から腰臀部脹脛にも痛みが広がり、腰の前屈が困難になり、
後屈は全く不可能となりました。
このような状態で当院を紹介されて来院しました。
所見
左の首から背中を通り臀部、大腿部の後側、脹脛の外側に痛み。左の股関節の痛み、
右の仙腸関節の痛み。
証は腎虚でした。患者さんに「腎虚」と言うことを尋ねると何回かそのように言われて治療を受けたとの事でした。
しかし一向に改善せず、治療を他の医療専門家を探し求めて来たとの事でした。
下肢の伸展テストは、右はB、左は@Bでした。
1回目の治療:
証は 脾実腎虚の81難型でした。
治療後、全ての痛みは解消しました。
2回目の治療:1週間後でした。
左の首から脹脛に至症状と左の股関節痛は解消していました。
主訴は腰痛で、証は腎虚心実で75難型でした。
どこかに炎症があると思われます。
3回目の治療は再び1週間後でした。
証は腎虚心実 77難型でした。
主訴は同じく腰痛でしたが、痛みは外側に移動し、腰椎の周りの痛みは解消していました。
炎症反応はなくなっていました。
4回目の治療は 同じく1週間後でした。
腰痛は解消していました。
主訴は首の痛みでした。
証は心実腎虚で75難型でした。
寝違えた覚えはないとのことでしたが首に何らかの炎症が有るのかもしれません。
腰痛はないとのことでしたが、腰椎の周辺に硬結が残っており、腰椎が左右に少し湾曲して
いるので首の痛みが解消すれば、再び発症すると思います。
首の痛みが激しいので腰痛を感じないのでしょう。
しかし、今まで、ほとんど反らすことが不可能であった腰が少し動くようになっていました。
そのために腰痛が緩和したのかもしれません。
5回目の治療も1週間後でした。
主訴は左の首から手にかけての痛みとしびれ。腰痛。
所見
腰痛は第2腰椎の位置で左右に広がっている。第5頸椎が後方に突出。第1腰椎が突出し、第2腰椎が凹んでいる。
証は脾実腎虚の81難型でした。
治療を初めてから、再び原発と思える腰痛に戻って来ました。
痛みが全身を一周しました。これから少しづつ腰痛が解消して行くと思えます。
痛みは最初に発症した処に少しづつ緩和しながら移って行くのです。
6回目の治療も1週間後に行いました。
主訴は背中の痛み。腰痛。
所見
だい9胸椎の周辺に痛み。背骨が後方に突出しているせいか?
証は肝実肺虚の77難型でした。
この証は未病治療法です。
治療後痛みは解消しました。
7回目の治療は2週間後でした。
主訴は特に有りませんでした。
診断は肺虚の69難の証でした。
これで治療を終了しました。
考察
上の症例のように、証は「腎虚」でしたが、難経の69難型による治療ではありませんでした。
つまり、最初の証は腎虚でしたが、69難型の腎経を補う方法ではこの腰痛は解消できません。
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