治療家のつぶやき:育毛について





「10年前に初めて右膝の内側に痛みを覚えてから何とかだましながら維持して来ましたが、
昨年の暮れあたりに再び痛みがひどくなりましたので、整形外科に通いました。湿布や鎮痛剤の治療を
受けて来ましたがはかばかしくありません。鎮痛剤を飲み続けるのも不安なので友人に薦められて
来院しました。」と言う病歴を持つ60台の女性は
「右膝を伸ばすと、膝の内側に痛みが出ます。椅子などから立ち上がる時苦痛で暫く動けません」と
訴えます。

週1回のペースで治療を6回し終わった後、彼女は次のように言いました。
「初めて鍼をされた時、チョンチョンと軽く触れるだけで本当に治るのかしらと思っていました。
でも5回目から痛みがかなり解消しました。不思議です。」
それに対して、私は「病を治すのはあなたの免疫力で、私は少し経絡の変調を整えるだけです。
あなたに治癒できる免疫機能があったからで、別に不思議ではありません。」と、答えました。
「そーうですかー。」と、彼女は納得しな様子です。
「でも不思議。それに最近髪の毛が増えて来たみたいです。頭に鍼を刺すせいかしら。毛が太く
なったみたい。以前色々試してみましたが効果が有りませんでした。」と彼女は意外なことを
つぶやきました。
以前から私は鍼による育毛作用に関心がありました。頭が禿げるのは東部に熱があるためで特に
腎虚のせいであると聞かされていました。足が冷えて頭に気が上るためで腎経の然谷に刺鍼すれば
良いとされています。しかし中々思うようにはならないものです。
「先生も試してみたら」と彼女は私の気持を無視した発言をしました。
『よけいなお世話だ。既に何度も試している。』と心の中で叫びながら、静かにそれに関して興味は
ない態度を装って次の言葉を続けました。
「私には治癒力としての育毛作用がないためです。」

実を言えば、細かい毛は出て来るのですが、それ以上育たないのです。原因はやはり治癒力が
欠けているせいかもしれません。
因みに彼女のカルテを開いて育毛の原因を検討してみましたが、腎虚で治療をしたのは10回の
うち1回だけでした。
ここで少し詳しく考察してみます。 彼女によれば、6回目の治療後に頭髪が増えてきたとの言でしたので、育毛作用があったのは初診から5回目の治療の結果です。 以下に示したのが初診から5回目の証です。 肺実心虚(75難型)、肝虚脾実(81難型)、脾実肝虚(75難型)、肺実心虚(75難型)、肺実心虚(75難型)

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