治療家のつぶやき12:腰痛について



ある大手の出版社の編集に携わっている患者さんが腰痛に関する本の出版を企画し、ある医者に
インタビューをして来たとのことでした。
医者が忙しいので、インタビューの内容を編集して医者の承諾を得て出版するそうです。

腰痛に関する本は良く売れるとのことで、4年前に出版した本も評判が良かったのでもう一度
出版することが決まったらしい。
腰痛に関する本なら今までに山ほど出版されており、yahooで検索すると4000万件以上が
ヒットするほどありふれていると思い、その疑問を尋ねると、パソコンが使えない人達が
購入してくれるとのことでした。
もう一つ私には疑問がありました。
本を購入した人は本から何を学ぶのでしょうか。自分の腰痛の原因を知って病院に行き、医者の
診断と本から得た知識が一致すれば安心するのでしょうか。
腰痛なら鍼治療を受けてみるのも一つの解決方法ですよと、書いてくれる医者の本であれば読む価値は有ると思いますが。

1年前、腰痛で苦しんでいる人から電話がありました。以前首の痛みで来院したことがある60台
後半の患者さんでした。
医者の診断によれば彼女の腰痛は加齢によるものだそうです。したがって治療法はないとのことでした。
しかしこの痛みを残りの人生中耐え忍ぶにはやりきれないと思い、当院の名刺を探し電話をした
とのことでした。
「先生、治るでしょうか」と、苦痛に耐えながらの訴えでした。
結果は7回の治療で解消できました。
70台の女性の脊柱管狭窄症の患者さんも、加齢による症状だから、治療方法はないと医者に
言われて当院を紹介され来院した一人でした。この患者さんは半年かかりましたが、痛みと痺れ感は
解消出来ました。

6、7年前になりますが、広島市内から車で1、2二間くらい入った山の中に住んでいる姉から
電話があり、義兄が腰痛で苦しんでいるとのことでした。
数日前、広島市内に入った頃、車をドライブ中突然腰痛を起こしたそうです。直ぐに病院に行き
鎮痛剤を注射してもらい、楽になったと喜んでいました。
市内で買い物や用事をすまして帰宅中再び腰の痛みを感じ始めました。
姉が運転を代わり義兄は後部座席に蹲ったまま帰宅せざるを得ませんでした。
その日は帰宅が遅くなったので、翌日近所の掛かりつけの医者に診察してもらったそうです。
帰宅後スッキリした義兄は「流石老人治療をモットーとしている医者だけある。」と、感心して
いたそうです。
しかし数日すると再び痛みが出て来ました

「何とかならない?」と、電話口の姉は私に聞いて来ました。
私は姉に支持をして、義兄を仰向けに寝かせ、痛む側の膝を伸ばしたまま足を上げてもらいました。
そして痛みの有無を尋ねました。
SLR(ラセーグ)テストを試みたのです。
結果は陰性でした。

腰痛と言うと直ぐに腎虚と決断する治療家がいると聞かされたことがあります。確かに腎虚証の
患者は多いけれど、腰痛イコール腎虚ではありません。
腰痛に関しては、素問の第41編の刺腰痛(しようつう)編が有ります。この中には症状とその
刺鍼部位を示していますが、不明な部分が多くて関係するところだけを参考にしています。
経絡治療は先ず証をたてる必要があります。証とは患者さんの症状であると共に治療方法でもあります。
7割以上の腰痛の症状は、脾虚、肝虚あるいは腎虚証のいずれかに分類出来ます。

先ず脾虚のテストは、患者を仰臥位にして、膝を屈曲させて膝を腹部に近づけて行きます。
痛みが出れば陽性です。
肝虚は痛みの有る側の膝を曲げ踵を反対の大腿部に乗せ、膝が床につくように上から押して行きます。痛みが出れば陽性です。
腎虚は腹臥位で、膝を屈曲して行き、臀部に踵を近づけて行きます。痛みが出れば陽性です。
治療はこれらの痛みを取ることです。解消できれば、腰痛は治ります。

義兄の証は脾虚でした。
以前広島に帰省した時、足関節を捻挫していた義兄の治療を行った事が有りました。帰京したら
自分で鍼をしたいと言う義兄に鍼を送っていましたので、そのはりを使うように姉に言いました。
私は姉に以下のように指示しました。
痛む側の足の第一指(親指)の内側から上に向かい脛骨のわきを上り大腿部の鼠蹊部の外側に
向かって、大腿部の中央まで軽く3 4回マッサージをする。
その後3か所は軽く揉んだ後鍼をする。
怖がる姉に鍼管をツボにあて、上から鍼を落とし、鍼先を持って軽く左右に回転させてから鍼を
除きその鍼孔を抑えれば良いと伝えました。
仰向けの状態で刺鍼する経穴(ツボ)名:
太白(たいはく):足の第1(親指)の中足指節関節の後ろで内側陥凹部。
地機(ちき):内果の上8寸で脛骨内側縁の骨際。
血海(けっかい):大腿部の前内側にあり、膝蓋骨しつがいこつ)内上角の上2寸。

これが終わったら、腹臥位(うつぶせ)にして、以下の2か所に鍼をする。
脾兪(ひゆ):第11・第12胸椎棘突起間の外1寸5分。
臀部の痛むところを軽く指圧して刺鍼する。

翌日姉から連絡があり、義兄の腰痛は解消したとのことでした。
それ以来痛みは再発していないそうです。
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