奇経は黄帝内経(こうてい だいけい:素問 霊枢)の中で陽維(ようい)・陰維
(いんい)・陽きょう・陰きょう・衝(しょう)・督(とく)・任(にん)・帶(たい)の
八つの脈を述べていますが、体系化して(奇經八脈)と名付けたのは「難経」であり、
二十七から二十九難にその内容を記載しています。
奇とは普通でないと言う意味で、経脈の拘束を受けない為に奇経と呼ばれます。
「難経」はその二十七難の中で奇経の発症のメカニズムを以下のように述べています。
聖人は溝渠(こうきょ)を圖り設けて.水道を通利し.以て不然に備.天より雨降下して.
溝渠溢滿(いつまん)す.此の時に當り.?(ぼうはい)妄(みだり)に行る.聖人もまた
圖ること不能(あ、たわず)也.この絡脉滿溢すれば.諸經もまた拘(かかわ)る不能也.
要約すれば雨が降って川が溢れて洪水をおこした時のことを考慮して聖人は溝渠(排水溝、
防水路)を作っているが予測出来ない大雨の時は溝渠からも溢れ出ることが有る。 道路に
溢れ出た水は川の水が引いた後も中々引かない。
経絡を河川に例えるならば、12経脈と絡脈は制御システムを備えた還流する水路であるが
奇経は還流系ではない為、邪気の勢いが余って、12の正経及び絡脉を越えると、奇経に流れ
込み、その中にとどまり本流に帰る事が出来ませんん。
従ってこの治療は奇経治療を併用しなくては治りません。